ネーミングライツを導入する際、多くの自治体担当者が最も悩むのが「価格設定」です。
安すぎれば「公共資産を安売りしている」と言われる。一方で高すぎれば応募が集まらない。
しかもネーミングライツには、不動産のような明確な市場価格が存在しません。
そのため、価格設定はしばしば「前例」や「感覚」に頼られがちですが、実際には価格そのものよりも重要なことがあります。
それは、“その価格を説明できるか”という点です。実際、ネーミングライツの価格設定で悩む自治体には、いくつか共通するポイントがあります。
「近隣自治体と同じくらい」で決めてしまう。
最も多いのがこのパターンです。「人口規模が近い自治体」「隣の市のスポーツ施設」「以前の募集金額」こうした“横比較”だけで価格を決めてしまうケースです。もちろん他自治体事例を参考にすること自体は重要です。しかし、ネーミングライツは単純な人口比較だけでは決まりません。例えば同じ人口規模でも、「駅前立地か」「年間利用者数はどうか」「大会開催実績があるか」
「地域の象徴的施設か」「メディア露出があるか」等によって価値は大きく変わります。
さらに、施設の歴史や地域における象徴性など、“文化的価値”も無視できません。価格を高く設定しすぎる自治体も少なくありません。背景には、「安いと議会で批判されるのではないか」「公共施設だから安売りできない」という心理があります。しかし、ネーミングライツは当然のことながら、“応募がなければ成立しない制度”です。特に地方自治体では、地域企業の数や広告予算規模にも限界があります。結果として、「募集を出しても応募ゼロ」「再募集を繰り返す」「最終的に条件を下げる」というケースも珍しくありません。そして実は、一度「応募ゼロ」が発生すると、その案件は企業側から慎重に見られやすくなる側面もあります。価格設定は、“強気”よりも“成立可能性”とのバランスが重要なのです。
「金額」だけで価値を作ろうとしてしまう
ネーミングライツの価値は、金額だけで決まりません。例えば自治体側が、「除幕式を実施する」「広報誌やSNSで発信する」「施設ホームページで紹介する」「地域イベントと連動させる」など、スポンサー露出を積極的に支援することで、企業側の満足度は大きく変わります。また、近年では企業側が現金だけではなく、施設運営に関連するサービス提供を行うケースもあります。例えば、「清掃や維持管理」「地域イベント支援」「設備提供」「人的支援」などを契約内容に含めることで、自治体にとっては単純な契約金額以上の価値につながる場合もあります。特に地域密着型企業の場合、「地域への貢献」を重視するケースも多く、金額だけでは測れない連携価値が生まれることもあります。ネーミングライツは、単なる“名称販売”ではなく、自治体と企業が地域価値を共同で支える仕組みとして捉える視点も重要です。
ネーミングライツの価格設定は、単なる“値付け”ではありません。その施設をどう位置づけ、どんな企業に来てほしいのか、どのような関係性を築きたいのか。そうした制度全体の考え方が、価格に表れます。「なぜその価格なのか」を説明できること自体が、制度設計の重要な要素とも言えます。施設特性や地域性、企業との関係性を踏まえて整理された価格は、企業側にとっても理解しやすく、結果として応募や継続契約にもつながりやすくなります。ネーミングライツで本当に重要なのは、“高い価格”ではなく、“納得される価格”なのかもしれません。
(NAME BRIDGE編集部)