ネーミングライツは広告事業として語られることが多い制度です。実際、企業名やブランド名が施設名称として使用されるため、認知度向上や企業PRを目的として導入されるケースは少なくありません。しかし、全国の募集事例を見ていると、契約の成立要因を広告価値だけで説明することは難しい場面があります。同程度の施設規模であっても応募企業が集まるケースと集まらないケースがあり、また提示金額だけでは選定結果を説明できないケースも見られます。そこには広告媒体としての価値だけではない要素が存在しています。
ネーミングライツは「広告枠」の販売ではない
テレビCMやWeb広告であれば、基本的には広告枠を購入する仕組みです。一方、ネーミングライツは公共施設やスポーツ施設、公園、文化施設などの名称に企業名を付与する制度です。対象となる施設は行政サービスの一部であり、多くの場合、市民や利用者との接点を持っています。そのため自治体は広告収入の確保だけではなく、「公共施設としての適切性」「施設イメージとの整合性」「契約期間中の安定性」なども考慮する必要があります。実際、多くの募集要項では価格だけでなく、企業概要や事業内容なども審査対象となっています。全国のネーミングライツ事例を見ると、本社や事業所が所在する地域の企業が契約しているケースが数多く見られます。もちろん地域企業の方が広告効果を得やすいという側面もありますが、それだけではありません。自治体にとっては、「企業の実態を把握しやすい」「継続的な連携が期待できる」「地域住民の理解を得やすい」といったメリットがあります。実際、募集要項の中には応募資格として、「市内に本社または事業所を有すること」
「市内で継続的に事業活動を行っていること」などを条件としている事例もあります。すべての自治体がこうした条件を設けているわけではありませんが、ネーミングライツを単なる広告販売ではなく、地域との連携施策の一つとして位置付けている自治体があることは事実です。また、応募資格に地域要件がない場合でも、審査項目に地域貢献活動や地域との関わりを盛り込んでいるケースは少なくありません。
施設との相性も重要な要素
ネーミングライツでは、施設と企業の組み合わせも重要な要素になります。例えばスポーツ施設であればスポーツ関連企業や健康産業、文化施設であれば教育・文化事業との親和性が高い企業が契約している事例が多く見られます。もちろん異業種の企業が契約することもありますが、施設の性格とかけ離れた企業よりも、利用者にとって理解しやすい組み合わせの方が受け入れられやすい傾向があります。ネーミングライツは契約締結後も数年間にわたり施設名称として使用されるため、企業名が施設とどのように結び付いて見えるかも無視できない要素です。ネーミングライツ募集では希望金額や最低応募価格が設定されることがあります。しかし実際の選定では、価格以外の要素を含めて総合的な審査が行われるケースがあります。募集要項によっては、「事業内容」「地域貢献活動」などが評価項目として設定されています。そのため、必ずしも最も高い金額を提示した企業が選定される仕組みとは限りません。自治体によって審査基準は異なりますが、価格以外の要素が評価対象となる事例は全国で確認されています。ネーミングライツを検討する際に、企業側は利用者数や施設規模だけを見るのではなく、「自社との関連性」「地域との接点」「活用方法」まで含めて考える必要があります。同じ契約額であっても、自社との親和性が高い施設とそうでない施設では、得られる効果が異なる可能性があります。また、地域との接点を持つ企業にとっては、広告効果だけでは測れない価値を生み出すケースもあるでしょう。ネーミングライツは広告媒体の一種でありながら、企業・施設・地域との関係性が契約の成立や活用に影響する制度でもあります。
募集要項や選定基準を見ていくと、その特徴は全国の事例からも読み取ることができます。
(NAME BRIDGE編集部)