ネーミングライツ制度を検討する際、自治体担当者がまず考えるのは次のような疑問ではないだろうか。
「自分たちの自治体でもネーミングライツは成立するのだろうか。」
ネーミングライツの導入事例を見ると、政令指定都市や中核市など、比較的規模の大きな自治体で多く見られる。そのため、人口規模の小さい自治体では「ネーミングライツは大都市の制度ではないか」と感じることも少なくない。確かに、人口規模はネーミングライツの成立条件に一定の影響を与える要素である。しかし、人口規模だけで制度の可能性が決まるわけではない。施設の特性や制度設計の工夫によっては、小規模自治体でもネーミングライツが成立しているケースは存在する。ネーミングライツを検討する際には、人口規模だけではなく、地域資産や制度設計の視点から可能性を考えることが重要になる。
ネーミングライツが成立しやすい自治体
ネーミングライツが成立しやすい自治体には、いくつかの特徴がある。例えば次のような条件である。
- 一定規模の地域企業が存在している
- 利用者数の多い公共施設がある
- 地域で認知度の高いスポーツ施設や文化施設がある
- 自治体と地域企業の関係性が比較的近い
ネーミングライツは単なる広告商品として理解されることもあるが、実際には企業が地域社会との関係性を示す取り組みとして導入されることも多い。そのため、地域企業の数や地域経済の規模が一定程度ある自治体では、制度が成立しやすい傾向がある。
人口規模の目安
ネーミングライツの成立条件を考える際、人口規模は一つの参考指標になる。
一般的な傾向としては、「人口50万人以上」「利用者数の多い公共施設がある」「県庁所在地」といった都市では、地域企業の数や施設利用者数が多いため、ネーミングライツ制度が成立しやすいと言われることが多い。一方で、人口10万人未満の自治体では、地域企業の数が限られるため、ネーミングライツの導入が難しいと考えられるケースもある。しかし、この人口規模の差は制度の可能性を完全に決定するものではない。
自治体規模よりも重要なもの
ネーミングライツ制度は自治体単位の制度であると同時に、個別施設を対象とする制度でもある。
そのため、自治体の人口規模が大きくなくても、“地域でよく知られているスポーツ施設”“イベントが開催される文化施設”“交通量の多い歩道橋”など、一定の認知度や利用者数を持つ施設が存在する場合には、企業にとって価値を見出しやすくなる。逆に、大都市であっても対象施設の選定が適切でなければネーミングライツが成立しないケースもある。つまり、ネーミングライツの成立は自治体規模だけではなく、「施設の価値」によっても大きく左右される。
対価は必ずしも金銭とは限らない
もう一つ重要な視点は、ネーミングライツの対価が必ずしも金銭に限らないという点である。
ネーミングライツは通常、命名権料という形で企業が金銭を支払う制度として理解されることが多い。しかし自治体によっては、企業が役務やサービスを提供する形でネーミングライツが成立するケースもある。
例えば、「トイレ施設のネーミングライツとして企業が清掃サービスを提供する。」「公園施設のネーミングライツとして維持管理を企業が担う。」といった形である。このような仕組みでは、自治体にとっては維持管理費の削減という効果があり、企業にとっても地域貢献を示す取り組みとして成立する可能性がある。ネーミングライツを金銭のみの制度として考えるのではなく、地域資産を活用した官民連携の仕組みとして捉えることで、制度の可能性は広がる。
コラム #01 でも触れたように、ネーミングライツの成否は制度設計に大きく左右される。
人口規模が大きくても、対象施設の選定や命名権料の設定が適切でなければ制度は成立しにくい。一方で、人口規模が大きくない自治体でも、施設選定・対価の設計・企業との関係性などを工夫することで、ネーミングライツが成立する可能性は十分にある。
人口規模だけで判断しない
ネーミングライツ制度は、自治体の規模だけで可能性を判断できる制度ではない。
地域企業の状況、施設の利用状況、地域社会との関係性など、複数の要素が組み合わさって制度の成立条件が形作られる。そのため、ネーミングライツを検討する際には、人口規模だけで制度の可否を判断するのではなく、地域資産の特性や制度設計の可能性を踏まえた検討が重要となる
NAME BRIDGEでは、全国のネーミングライツ事例を整理することで、自治体ごとの条件や制度設計の違いを把握できる情報基盤の整備を進めている。ネーミングライツを人口規模だけで判断するのではなく、地域資産を活かす制度として捉えることが、制度活用の第一歩になるだろう。
NAME BRIDGE編集部